伊敷中学校の研究について

研究主題・副主題

新しい時代を切り拓く資質・能力を身に付けた生徒の育成

ー 授業とカリキュラムの質を高める学習評価の工夫を通して ー



はじめに

 生徒たちが生きていく未来は、どのような社会になっているのでしょうか。現在とどのような違いが生じているのでしょうか。グローバル化、少子高齢化、高度情報化…実社会の変化はめまぐるしく、将来の予測は非常に難しいものです。このような時代を生きていく生徒たちには、これからの変化を受け身で捉えるのではなく、むしろ自ら「時代の形成者」となってほしいものです。そのためには、主体的に課題を見つけ、他社と協働しながら、よりよい社会を創造していく力が求められるのではないでしょうか。そこで、本研究の主題を「新しい時代を切り開く資質・能力を身に付けた生徒の育成」としました。


今年のテーマは「学習評価」

 皆さんは「評価」と聞くと何を思い浮かべますか。通知表でしょうか?指導要録もありますね。私たちは授業を通して生徒に学力(=資質・能力)の育成を図っているわけですから、当然どこかの場面で、本当に学力が身についているのかを評価しているわけです。しかし、その評価が非常に難しい・・・。いつ評価すれば良いのか?どのくらい評価をすれば良いのか?評価しても、本当にその評価は妥当なのか?そもそもどのように評価すれば良いのか?本校でも同じような悩みを抱えながら、過去4年間研究を続けていました。ここで今一度評価に正面から向き合うことで、さらに生徒の力を伸ばすことができるかもしれません。

 さらに、今年から全国の中学校で評価の観点が変わることもあって、多くの先生方が「評価」について模索しながらも学びを進めていると思います。本校も、そんな先生方とともに学びを進めたいものです。



「学習評価」は「主体的・対話的で深い学び」と「カリキュラム・マネジメント」の質を向上する

「学習評価」の質が向上すると、「主体的・対話的で深い学び」や「カリキュラム・マネジメント」の質が向上します。本校では、そのことについて、以下のようにまとめています。


・・・以下論文より抜粋・・・

そもそも「主体的・対話的で深い学び」を実現することとは,本時,もしくは単元や題材等でみられる生徒の学びの姿から資質・能力を評価し,浮かび上がった成果や課題を以降の授業改善につなげることである。

また,「カリキュラム・マネジメント」とは,現在の教育課程において行われる教育活動の中で,生徒の学びの姿から資質・能力を評価し,浮かび上がった成果や課題を基にカリキュラムを改善することで,社会に開かれた教育課程の実現を図る一連の流れである。

どちらにおいても生徒の資質・能力の評価が重要な位置を占めており・・・(以下略)

・・・抜粋終了・・・


このような思いや考えから、今年度研究副主題を「授業とカリキュラムの質を高める学習評価の工夫を通して」としました。


研究の内容①

 授業の質を高める学習評価の工夫

さて、ではどのように評価を進めれば良いのでしょうか。今回文部科学省からは、評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で評価することが示されています。そこでそれぞれの観点ごとに留意点を定めることとしました。



「知識・技能」の評価

知識について、これまでの研究から、個別の事実的な知識(以下個別的な知識)と,それらが相互に関連付けられ,更に社会の中で生きて働く知識(以下関連付いた知識)の2種類をがあると考えています。(本校では、「深い学び」知識が繋がっていくような学びとして研究してきた過去があります。)

「知識・技能」の評価については、それらの違いをしっかりと意識しながらどちらも評価する必要があると考えています。そのことについて、論文では次のようにしています。


・・・以下論文より抜粋・・・

個別的な知識は,関連付いた知識を形成する上で重要な要素となる。個別的な知識自体を習得することは価値ある活動であり,各教科等の指導では,今後の学習や社会に出たときに必要となる程度の個別的な知識を教授されるはずである。

そこで評価に当たっては,過度に難解な用語等の記憶を測定するものではなく,単元や題材等を通して必要と考えられる程度の個別的な知識の習得状況を測るようにする。

関連付いた知識は,先に述べたとおり個別的な知識が相互に関連付いた状態の知識であり,他の学習や生活の場面でも活用できる程度の知識である。この知識は,新たに学習する知識を生徒が保有する既存の知識と関連付けることにより生成されると考えられている。各教科等の指導では,生徒がもつ知識を活用して思考する場を設けることで,知識を相互に関連付け,深い理解が得られるような学習が行われる。

そこで評価に当たっては,そのような学習を経ることで得られた知識を対象に測るようにする。知識を評価するためには生徒がもつ既存の知識や,単元や題材等を踏まえ関連付ける知識を把握しておく必要がある。ただし,ここで求められる関連付いた知識は,他の学習や生活の場面でも活用できる程度のものであり,過度に高度な知識を求めているわけではないことに留意する。

技能も同様に,反復練習で習得できる単発的な技能に加え,それらが関連付けられ,身体化した技能も評価することとする。

・・・抜粋終了・・・


「思考・判断・表現」の評価

 「思考力,判断力,表現力等」については、学習指導要領解説で「理解していることやできることをどう使うか」に関わるものとして説明されています。つまり「思考力,判断力,表現力等」とは知識や技能を活用する場面で発揮される能力と考えることができるわけです。やや漠然とした話になるかもしれませんが、知識同士が繋がるときに使われる力が「思考力,判断力,表現力等」と考えても良いのかもしれません。

そこで本研究ではとりわけ見取るのは難しい生徒の思考状況を可視化することで、評価しようと考えています。そのことについて、論文では次のように説明しています。



・・・以下論文より抜粋・・・   

「思考力,判断力,表現力等」の使い方については,それが表出されたときの具体的な生徒の学びの姿で想定しておく必要がある。例えば,事象を具体化して捉えるという思考を使った生徒は,「○○について,たとえば・・・」と発言することが想定できる。また,発散的な思考を使った生徒は,ワークシート等にウェビングマップを作成することが想定できる。


ウェビングマップの例(発散的な思考がよみ取れる)

・・・抜粋終了・・・


「主体的に学習に取り組む態度」の評価

 「主体的に学習に取り組む態度」については、中央教育審議会より次の図が示されています。

「児童生徒の学習評価の在り方について(報告) 平成31年1月21日 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会」より

この図より評価を行う際は次の2つの態度をヒントにすれば良いようです。このことについて論文では次のように表しています。

・・・以下論文より抜粋・・・

 「主体的に学習に取り組む態度」は,①粘り強い取組を行おうとする側面と,②自らの学習を調整しようとする側面の二つの側面で評価する必要がある。ただし,これらはそれぞれが独立しているものではなく,相互に関連しており,生徒の学びの姿としては一体として表出されることに注意が必要である。特に自ら学習を調整しようとする態度に関して,伊藤(2008)は「興味をもって目標を設定し自分でできるという感覚から方略を計画する『予見の段階』,実際に行うにあたっては注意を計画的に配分し自分が理解できているかをモニタリングする『遂行の段階』,その遂行を自ら評価し上手くいかなかった,上手くいった原因を分析しさらにより向上できるようにしていく『自己省察の段階』のサイクルを続けられるようになっていくことで,自らの学びを自ら計画し行動していける学習者の育成が可能となっていく」と提唱している。よって,指導に当たっては,上記の段階に配慮して指導することになる。

・・・抜粋終了・・・


評価をどのように指導につなげるか

では、評価をどのように指導に繋げれば良いのでしょうか。本校では次のような基準をつくって、全教科で統一しています。

〔ケース1〕は多くの生徒がB基準を満たし、更にB評価よりA評価の生徒が多かった場合です。この場合、学級全体の評価を「十分ねらいを達成できた」と捉えることとします。その要因を、それまでに行われた手立てにあると考え、次回以降も同様の手立てを適用する方向で授業改善を行います。

〔ケース2〕は多くの生徒がB基準を満たしてはいますが、A評価よりB評価の生徒が多かった場合です。この場合、学級全体の評価を「概ねねらいを達成できた」と捉えることとします。そこで、次時以降の授業改善の方向性として、B評価の生徒をA評価に引き上げることをねらいとして手立てを考えることとします。

〔ケース3〕は多くの生徒がC評価であった場合です(実際に「ケース3」になることは考えにくいのですが・・・)。この場合、学級全体の評価を「ねらいを達成できなかった」と捉えることとします。その原因を探し出し、C評価の生徒をB評価に引き上げることをねらいとして手立てを講じる方向で授業改善を行います。また、必要に応じて、学び直しの場を設定します。


研究の内容②

カリキュラムの質を高める学習評価の工夫

 今回の学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の実現が目指されています。これまで学校で育成される学力は、ペーパーテストでは満点が取れても社会に出ると役に立たないと言われることがありました。もちろん現場レベルでは社会に出てからも活用できる学力を育成しようとしていたのですが、少なくとも学習指導要領等には、「何を学ぶか」という学習内容しか書かれていませんでした。そのため、学校教育全体が、どの時期に何を学習するのかといった学習内容を中心とした教育課程を組んできたのかもしれません。教育課程が社会に閉ざされていたわけです。しかし、今回の学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」と記されています。つまり、学校と社会が育成を目指す資質・能力を共有することで、社会に出てからも活用できる力を学校教育で確実に育成していこうというわけです。また、教育はこれからの社会の有り様を大きく変化させる力を秘めています。そこで、教育の力で社会をよりよくしていこうという思いも込められています。そのような人材育成を図る教育課程が、「社会に開かれた教育課程」というわけです。

 それを実現するためには、教育課程、つまりは学校のカリキュラムを改善し続けることが重要ではないでしょうか。そこで、本研究では、カリキュラムを「学習評価」の側面から見つめ直すことで、カリキュラムの質の向上を目指しました。


カリキュラムの評価方法

本校が行った評価を軸にしたカリキュラムの改善は次の通りです。

まず、年間を通して全職員で生徒達を評価する場面を6場面程度に絞ります。評価場面は体育大会等、全職員が比較的共通に生徒を見ることができる場面としました。

次に評価基準ですが、これは本研究の初期から使っていた「汎用的資質・能力ルーブリック」を使うこととしました。

「課題発見力」「情報活用力」「論理的思考力」「協働する力」「メタ認知」は、本校が育成を目指す汎用的な資質・能力になります。本校教職員は評価の場面ごとに、このルーブリックを片手に、今の生徒の力を4段階で評価していきました。


評価をカリキュラムの改善にどのようにつなげたか

 評価をしたら、次にカリキュラムの改善です。通常は1年後の同じ教育活動に評価から得られた情報を反映させます。例えば、体育大会で評価を行った場合、その評価が生かされるのは、1年後の体育大会になるわけです。これでは期間が開き過ぎます。そこで、各教育活動の反省を、次の教育活動につなげるようにしました。例えば体育大会のの取組に対する評価では、「情報活用力」に課題が見られました。そこで文化祭の取組において、「情報活用力」を向上させるような取組を、全校で行うよう計画しました。


以上、本校の研究の概要をご説明しました。詳しくは研究冊子をご覧ください。一冊2000円で購入することが可能です。また、R3年5月28日に研究公開を予定しております。そこでも詳しくご説明できるかと思います。

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